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April 01, 2005

王道の狗 全4巻

 これは面白い。お薦めです。以前KCDXから一度出版されてたらしいのですが、知りませんでした。あとがきに白泉社版は加筆された正式版としたい、とありました。ちょっとバンダイ商法かも(^_^;)。この場合バンダイとは関係ないけど。
 さて内容。明治時代の話。時代の流れに翻弄された主人公が、時代の流れの影の担い手となっていく姿が描かれています。自由民権運動から日清戦争、三国干渉あたりまでの時代で、日本が近代化し、そして戦争の世紀へ突入していこうとする半歩前といった感じです。
 安彦良和は、日本が軍国化していくキッカケになったのは日露戦争に勝利したことではなく、日清戦争をやったことだと考察しています。日清戦争に勝利し、遼東半島を割譲させた。それが三国干渉を生み、日露戦争に繋がり、そして昭和の軍国主義に至ったのだと。
 日清戦争を始め、遼東半島を割譲させたのは誰だったか。時の外務大臣、陸奥宗光でした。この作品は陸奥宗光とその時代を描き、陸奥に対抗する位置に主人公を置きました。リアルに、歴史に自分のキャラクターを潜り込ませています。
 そのため、陸奥宗光をかなりオドロオドロしく描いています。しかし勝海舟や陸奥宗光、福沢諭吉などの、不気味な描かれ方は素晴らしく、ちょっと感動モノです。イヤらしい感じがとってもリアルで、「うわ~、こんな感じだったんだろうなぁ…」てな具合です。
 また、主人公の転換機として、足尾銅山の話が出てきます。
 (私が子供の頃の)歴史の教科書では、陸奥宗光を「坂本龍馬の弟子。海援隊出身。不平等条約の撤廃に尽力した近代史上の英雄」のような扱いで紹介していたと思います。しかしこの作品で、足尾銅山の鉱毒流出問題を世に訴えた田中正造の敵が、陸奥宗光であった事を改めて思い出させられました(陸奥の二男潤吉は、足尾銅山の経営者である古河市兵衛の養子になっています)。
 国内には田中正造(農民)の敵としての陸奥宗光。
 国外には日本の軍国・帝国主義化の黒幕であった陸奥宗光。
 いやもう、悪役ですなぁ。
 ただ、物語の流れとして、護衛任務中で熱海にいた主人公が「チョット足尾銅山まで行ってきます」ってのは無理があったんじゃないのか。東京の反対側ですよ?何日かけて行ったんだよオイって感じ。それがキッカケになって後の話が広がる訳ですが…。
 全体を通して、手塚治虫が生きていたらこんな物語を描きそうだな、という印象を受けました。匂いがするって感じかな。それが良いことなのか悪いことなのかはちょっと微妙かも(^_^;)。

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Comments

>ただ、物語の流れとして、護衛任務中で熱海にいた主人公が「チョット足尾銅山まで行ってきます」ってのは無理があったんじゃないのか。

王道の狗,とても面白いですね。
ところで,主人公が足尾銅山に行ったのは,金玉均について栃木の温泉に療養に行ったからでは?旅館で田中正造と主人公がはち合わせるシーンがありました。

Posted by: みのりん | December 14, 2008 09:02 PM

>みのりんさん
 いやまぁ、そうなんですけど。そのすぐ前に平塚だ小田原だという展開なので、温泉療養だったら箱根熱海が自然ではないかと思った訳です。ずいぶんとまた反対側の遠いところにわざわざ行くもんだなぁ、と感じたわけで。陸奥宗光のセンで話と場所を「移した」ということなのでしょうネ。

Posted by: 竜馬 | December 15, 2008 04:53 PM

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        明治維新後から昭和にかけての時代を駆け抜けた青年の物語。 この時期の日本近代史というのは、きわめてすっぽり抜けている。受験に忙しくて中高校で教えないこともあるが、そこに至るまでの大日本帝国と日本民族の評価の定まったイメージが無いからだ。 司馬史観による明治〜日露戦争までは弱小のアジアの小国が、巨大なパワーズ(欧米列強)と戦うという美しい物語で回収で�... [Read More]

Tracked on May 18, 2005 01:02 AM

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