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December 14, 2005

JIN

 現代の外科医が幕末にタイムスリップする…という漫画。歴史を変える危険性を考えつつも、医者として命を救う事に躊躇しない主人公南方仁。勝海舟の庇護を受け、緒方洪庵に興味を持たれ、坂本龍馬と吉原に遊びに行く…と興味深いというか、おいしい展開が続きます。
 南方仁の医者としての技術は革命的で、当時の人に色々な影響を与えます。脳血腫の外科手術など江戸時代の人間には理解し難い治療をドラスティックに行ったり、また風疹やコレラの治療法を広げたり。はたまた生理食塩水はもとよりペニシリンの精製まで行い、多くの命を救おうと活動を展開します。
 幕末の日本に存在した道具を使ってペニシリンの高度精製を行うあたりは非常に面白く、読み応えのある展開です。その科学的な展開の面白さはもとより、当時の奥医師の人々の反応もまた面白い。素直に「すごい」と喜んでいられない奥医師たち。南方の存在は彼らを脅かすものであり、邪魔者に過ぎない…などの反応もまた面白く読み進めます。

 この先、どういう展開が繰り広げられるのか非常に楽しみで、興味がつきません。
 読者の勝手な想像ですが…歴史上、この先にある出来事といえば、14代将軍家茂がまず思い浮かびます。彼は病弱のため、この先20歳で死ぬ予定ですが、どうなるか。勝海舟は家茂には覚えのいい人物です。勝の庇護を受ける南方が繰り出される事は容易に想像出来るし、その際に奥医師はどう動くのか、家茂は命を永らえるのか否か、という興味があります。家茂が助かれば、15代将軍慶喜は成立しません。
 また、京都には孝明天皇が存在します。彼も遠からず亡くなってしまう予定ですが、どうなるか。彼が存命となれば、大政奉還の形もひょっとすると変わっていたかもしれません(少なくとも、もう少し遅くなったのでは)。そして何より坂本龍馬。彼が暗殺される事は南方も意識していますが、その歴史を変えようとするのかどうか…。

 かわぐちかいじの「ジパング」など踏まえても、タイムスリップものの中ではピカイチの作品だと思います。かの作品でも、自分達が存在した平成という時代(未来)を大きく変えてしまう危惧とそこへの踏み込みを決意する…という展開がありましたが、この作品もまた大きく世の中を変えてしまいました。
 彼が救った命、というだけではなく、ペニシリンの精製が遙か数十年も早まってしまったことは非常に大きな出来事だと思います。普通に考えれば、未来は変わりすぎるぐらい変わってしまうでしょう。手術で数人助けた、などというレベルではなくなってしまうのです。
 この先の物語の展開をどう収拾をつけていくのか興味が尽きません。歴史上の人物との係わり合いがまず面白い展開ですが、もはや後戻りの出来ない大きなうねり、時代の潮流に南方は乗ってしまったのですから。

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