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July 06, 2008

食いもの~

 深夜0時まで仕事をしていた。腹が減っていた。

 その日、仕事を行っていた場所の周辺は横浜の住宅街の中で、街道沿いに立つビルの周囲はマンションやら住宅やらが立ち並び、食事のできる店などほとんど見当たらないか、あってもとっくに閉まっている時間帯であった。しかしその中、一軒だけ心強い味方がいた。吉野家である―――。

 作業は予定時間を押しており、がしかし、人間が急いでもどうにもならない状況でもあった。作業時間が押しても、メンテに使用できる時間が豊富にあり、しかもトラブルという訳でもない。システムが処理していく時間をただ待つ、ハードディスクのアクセスランプをただひたすら見つめる時間が刻々と過ぎていく。

 だからこそ、吉野家の牛丼の事を思い浮かべる余裕があった。

 「腹減ったなー。今日は特盛を喰ってやろうかなー」
 「でもやはりこの時間にそれは食べ過ぎかなー。並で抑えようかなー。牛丼以外のものは選択肢に無いなー」
 「ビールも飲みたいなー。でも待てよ。0時過ぎたら酒類は販売しないんじゃなかったっけか?まぁいいや―――」

 そんな事を思いながら、0時過ぎ、漸く解散。
 幾人かいたメンバは直ぐにタクシーを呼んでいた。皆は食べずに帰ると言う。呼べば5分もかからずタクシーはやってくる。吉野家に行く私はタクシーを断り、別れを告げ先にビルを出た。
 路面が濡れている。霧雨だ、濡れて行こう。春雨かあれは。

 ビルを出てすぐに呼ばれたであろうタクシーが数台、エントランスに飛び込んで行く。横目に見ながら、ビルから200mほどの道をひたすら歩く。やがて「吉野家 この先50m」の看板が見えた。夜中に一人歩くと結構な距離である。だが私の脳裏には暖かい牛丼が渦巻いている。もう一息だ、という想いが足を前に進めていた。

 ―――だが…何かが違う。近づくにつれ、違和感を感じた。何だ?…そうか、電気がついていない―――?

 目の前に迫り来る吉野家。だが開いていないのはもう明らかだ。虚脱感が全身を襲うが、その理由を知るべく、最後の力を振り絞って歩く。何故だ?潰れてしまったのか!?

 改装中。

 と書いてありました。よりによって、日程がばっちり重なっておりました。

 他に選択肢などない。土地勘も無く、街道沿いの店は、飲食店はおろか全ての店がことごとくシャッターを下ろしていた。その街道も、別に店が連なっている訳でもない。駐車場だったり、空き地だったりする方が多いのだ。走り去る車が我が身をたまに照らす程度…なのである。
 薄暗い中、ぽつねんと佇むわけにも行かない。タクシーを呼んだ。呼んでいる最中に目の前をタクシーが通り過ぎた。まぁ、そんな日もあるさ。
 吉野家の目の前に自動販売機があった。せめて飲み物を…。だが、コインを入れても自動販売機は動かず、カシャン、とお釣り口にコインが落ちた。「またまたぁ」…カシャン。電源が切られているようだった。まぁそんな日もあるさ(泣)。

 やがてタクシーが来た。途中コンビニに寄ってもらい、お茶とオニギリ1コを買い、車内でかぶりつき、やがて目を瞑る。もう、1時近くになっている。明日も今日と同じく、朝5時半には起床なのだ―――。

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