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September 11, 2014

いたずら

 出勤中のこと。
 マンションのベランダを見上げて手を振っている女の子を見かけた。赤いランドセルを背負っている。どこにでもある風景である。

 それが歩く方向30mほど先であろうか。女の子は歩きだし、角を曲がってビルの陰に隠れた。

 私も歩きながらそこを曲がる。そこは環状八号線の歩道である。そこで訳がわからないものを目撃した。さっきの女の子が歩道の立木に隠れながら、持っている帽子を車道に投げ入れたのだ。
 帽子は片道二車線道路のセンター側に転がった。その上を数台の車が通過した。とりあえず、何事もなかった。

 「コラッ」
 私は言いながら声をかけた。
 「なんでそんなことするんだ」
 言いながら後続車を確認する。来てないので車道の帽子を拾い上げ、歩道に戻る。
 「なんでそんなことをしたの?」と聞いても
 「ごめんなさい」しか答えられない。

 「お母さんのところに行こうか」そう言うと若干怯えるというか、「マズイ」的表情で顔を背けた。いきずりのオッサンより、母親に怒られることの方が怖かろう。
 先程見えていたのでマンションのおおよその部屋の位置は分かっていた。
 その場で開放すると、「へんな人に見られたが逃げられてホッ」で終わってしまう。
 すると女の子は「今忙しいので…」と学校方面に行こうとする。
 「だめだよ」
 私は腕をつかみ、「お母さんのところへ行こう」と腕を引いた。
 引きながら名前を聞き、学年を聞いた。2年生だと言う。
 帽子はどうも、自分の帽子ではないらしく、拾ったものらしかった。

 呼び鈴を押し、母親に事情を説明した。
 「申し訳ありません」と母親。
 別に私に謝られても。
 「なぜそんな事したの!これどこで拾ったの!捨ててきなさい!」と母親。いやそうじゃなくて。それがどんなに危険な事なのか、やってはいけないことなのか、に言及しないのか。しかもその時点では私の手の中にある帽子。親子とも受け取ろうともしない。
 しかしこちらも出勤中のこと。長時間付き合っている場合でもないし、その必要もない。帽子を渡し、「お子さんに注意してくださいね」と言ってその場を後にした。
 ところが、エレベーターを待つ20秒ほどの間に、女の子がすぐにやってきた。手には帽子を持っている。恐らく、あった場所に捨てるのであろう。
 「もうやっちゃダメだよ」と言うと、コクン、と頷く。だが、目の中に反省の色は見られない。この短時間に親がどこまで叱ったかも甚だ怪しいと言わざるを得ない。その帽子を、どこにどのように捨てるのか。

 一瞬、悩んだが関わるのをやめ、エレベーターを出てそのまま歩き始めた。女の子は再びマンションのベランダに手を振ろうとしていた。私は振り返らず歩いた。

 この角は毎日行き帰る。

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